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使用者の安全配慮義務

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することを目的として定められています。事業者は、労働災害を防止するために、労働安全衛生法で定められた最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境をつくり、労働条件を改善することで、労働者の安全と健康を守らなければならない、と定められています。

使用者の安全配慮義務

平成20年3月に施行された労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と、使用者の労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)を明文化しています。
危険作業や有害物質への対策はもちろんですが、メンタルヘルス対策も使用者の安全配慮義務に当然含まれると解釈されています。
労働契約法には罰則がありませんが、安全配慮義務を怠った場合、民法第709条(不法行為責任)、民法第715条(使用者責任)、民法第415条(債務不履行)等を根拠に、使用者に多額の損害賠償を命じる判例が多数存在します。

安全配慮義務と健康配慮義務に関する判例

事例1 システムコンサルタント事件
最高裁判所第二小法廷 平成12年10月13日 労判第791号

【概要】

Aさんは、ソフト開発会社でシステムエンジニアとしての業務に従事していました。入社以来、年間総労働時間は平均して約3,000時間近くに達していました。
Aさんは、就任してから死亡するまでの約1年間、プロジェクトリーダーとしてプロジェクトの進捗管理、要員管理、品質管理及び発注元及び協力会社との調整作業にあたっていました。
クライアントと作業者の間での板挟み状態の中、労働時間だけでなく、精神的負荷まで強いられることとなりました。

その後、Aさんは、自宅で倒れ、直ちに病院に緊急搬送されましたが、脳幹部出血により死亡しました。

【裁判の結果】

安全配慮義務を尽くさなかった債務不履行がある旨主張し、逸失利益・慰謝料等の損害賠償を求めました。
第2審は3,200万円の損害賠償責任を認めました。

事例2 電通事件
最高裁判所第二小法廷 平成12年3月24日 労判第779号

【概要】

Bさんは、24歳で電通に入社しました。ラジオ局に配属され企画立案などの業務に携わっていましたが、長時間残業・深夜勤務・休日出勤などの過重労働が続いた結果、うつ病になり、自宅で自殺しました。

【裁判の結果】

下記の内容で合意に至りました。
(1)会社は遺族(両親)に謝罪するとともに、社内に再発防止策を徹底する
(2)会社は一審判決が命じた賠償額(1億2600万円)に遅延損害金を加算した合計1億6800万円を遺族に支払う

使用者は、安全配慮義務とならんで健康配慮義務を疎かにすると、高額の損害賠償金を請求されることもあります。企業のリスク管理上真剣に取り組まなければ、企業存続に関わる問題であると言えますね。

事例3 アテスト(ニコン熊谷製作所)うつ病自殺事件
東京高裁 平成21年7月28日 労判990号

【概要】

Cさんは、業務請負会社である株式会社アテスト(旧ネクスター)に就職し、株式会社ニコンの熊谷工場において、勤務していました。
十分な支援体制がとれていない状況下において、過度の仕事量、また、長時間に及ぶ拘束に縛られ、身体的精神的な負担を伴いながら勤務していました。
更に、正社員でないために、解雇への不安も重なり、自殺により死亡しました。

【裁判の結果】

裁判長は「不規則、長時間の勤務で、作業内容や閉鎖的な職場の環境にも精神障害の原因となる強い心理的負担があり、自殺原因の重要部分は業務の過重によるうつ病にある」と指摘しました。
また、「人材派遣、業務請負など契約形態の違いは別としても、両社は疲労や心理的負担が蓄積しすぎないよう注意すべきだった」と安全配慮義務違反を認定しました。
結果、両社に損害賠償の支払を命じました。(現在上告中)実質的な派遣労働者の過労自殺を認め、賠償を命じた判決は初めての事例です。(過労死弁護団全国連絡会議)

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